人魚姫は深い海のお城で暮らしていたの
人魚姫は
おばあさまのお話を聞くのが大好き
それはもう
キラキラした瞳で聞いていた
人魚姫のおばあさまは
人間の世界について話します
人間の世界はね
緑の森があって小鳥が飛んでいるのよ
小鳥は朗らかな声で歌いながら飛ぶの
地面には
よい香りのするお花が咲いている
人間は2本の足で歩いているのよ
人魚姫は思います
人間の世界に行ってみたいな
歌いながら飛ぶ小鳥を見てみたい
お花の香りもかいでみたい
だって
海の底の花には香りがないのですもの
そして大理石の像に話しかけます
人間はこんなに冷たいの?こんなに静かなの?
子どもたちは
みんなかわいらしくて笑っているの?
人魚姫は王子を初めて見たとき
なんて素敵な人かしらと思ったのね
いつまでも見つめ続けたの
見ないではいられなかったから
王子を見ていると
幸せな温かな思いがあふれたのね
だからあの白い砂浜に行ってみないではいられなかった
でも
どんなに待っても
王子の姿を見ることはできなかったの
一番見たい王子の姿はどこにもなかったってわけ
それからというもの
人魚姫は1日中
海の底の花園に座っているようになったわ
人魚姫は
おばあさまに聞いた
私たち人魚は
人間の世界で暮らすことはできないの?
おばあさまは答えます
できないのよ
人魚と人間はまるで違うから
一番大きな違いは
人間が魂を持っているということなの
魂は
人間が持っている一番美しいもの
一番尊いものなのよ
人魚姫は
渦巻いている水を通り抜け
暗くて恐ろしい道を抜けて
魔法使いに会いに行ったの
何度も何度も王子の姿を思い浮かべながら
とても恐ろしいけれど
魔法使いに相談してみようと思ったのね
魔法使いはにやりとして言ったの
どんなことをしても
王子のそばに行きたいのだね
しかも
きれいなしっぽを捨てようと思っている
人間の王子を愛している?
やめた方がいいね
不幸になる
人間が幸せにしてくれるわけがないじゃないか
人魚姫は、答えます
どうなってもかまいません
王子のそばにいけるのなら
魔法使いは伝えます
薬を飲めば足がはえてくる
けれどもその足は歩くたびに
鋭いナイフで突き刺されたように
ズキズキと痛む
そして二度と海の底にはもどれない
王子に愛されなければ
胸は破れて体は水の泡になる
それでもいいのかい?
王子のそばにいけば、幸せになれるわ
人魚姫はそう言って
王子に愛をもらっても
水の泡になってとしても
海の底へはもどれないと知りながら
声を無くして
さよならも言えずに
海の上へとのぼって行ったのです
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