風見鶏の唄
デジブック『 風見鶏の唄 』
http://www.digibook.net/d/2cc5a77b81d906306d862f263c5846df/?m
31作目
歌うたう手紙です
小鳥・・・
の場面では本当に小鳥がいるので
探してみてくださいね
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デジブック『 風見鶏の唄 』
http://www.digibook.net/d/2cc5a77b81d906306d862f263c5846df/?m
31作目
歌うたう手紙です
小鳥・・・
の場面では本当に小鳥がいるので
探してみてくださいね
僕はひとりの女性を見ている
僕は彼女が通っている病院前の
イチョウの木
その女性は
ももという名前だ
栗色の長い髪
青白い顔
ざっくりとしたセーター
身長は僕より低くて
158センチ
何を考えているのかわからない
気になる女性
いつも忙しそうに慌てて
僕の前を通り過ぎる
病院へ入ると
自販機でお茶を買って
呼吸器内科の待合室に座る
座ってまっすぐ前を見て
何か考え事をしていると思ったら
壁にもたれている
ゲーテのウェルエル
星の王子さま
本を読んでいると思ったら
居眠りをしている
ラフマニノフ
マーラーとかいう音楽も
聴いているようだ
待ち時間
ひとりになれる時間を楽しんでいる
診察室に入ると
なにやら笑いながら話している
そしてすぐに出てくる
それから慌てて薬局に向かって
そこでジャスミンティーを飲む
また
忙しそうに僕の前を通る
その時
僕を見上げるんだ
つらそうな顔
元気そうな顔
悲しそうな日
笑っているような日
僕は呆れてみたり
笑ってみたりしている
今にも声をかけそうになることを
我慢しながら
でも
もうさよならなんだ
僕はもうすぐ切られてしまう
嬉しそうなももに
黄色な葉を
振りかけることもできない
黄色いじゅうたんみたいね・・・
そう小声で言って喜んで歩くももを
笑顔を
もう見ることもできない
ならば
ももが目の前にいる間に
黄色な葉を
振りかけられる時のなかで
ももに手が届く時のなかで
この気持ちを伝えておけばよかった
いつも僕は見ているだけだけれど
本当はいつも君のことばかり考えていて
誰よりも心配していたんだ
好きだよ ありがとう
ごめんね
さようなら もも
春になって僕の体から芽が出た時
ももは気付いてくれるだろうか
もう
遅いだろうか
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