0.5秒
彼は学歴も家柄というものも
持ち合わせておらず
収入も少なかったけれど
ただ優しく
料理が上手で
ケンカをした後
彼が焼いて持って来てくれた
たっぱーに入ったお好み焼きは
笑顔になってしまうくらい
おいしかった
惜しげもなく
ストレートな愛情を
注ぎ続ける人だった
人なつこく
だけれど
人に信用されず
いいかげんで
嘘をつき
常識のない
適当に働き
適当に生きている
そんな男性だった
彼に夢中だったわたしは
かなり条件の良い男性を
選ぶのだろうと
周りから期待されていたこともあり
彼のことについてはなにかと
難癖をつけられた
だけれどわたしは
特に気にしてもいなかった
人を好きになる瞬間なんて
一瞬の
そう0.5秒くらいの出来事で
滅多に起こることでもなく
理由を説明しようにも
説明できなかった
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