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2015年11月に作成された記事

2015年11月26日 (木)

そろりと咲いた

種から育てた

コスモスの咲く日を

わたしは心待ちにしていた

けれども

かたいつぼみは

いつまでもかたいままで

ルージュのように

口を閉ざしたまま

覗き込むわたしを

残念がらせた

そんなコスモスが今日

そろりと咲いた

ずいぶんと遅咲きで

ちいさな花

ひとつ

だけれど可憐な

赤い花

花を見せたいひとが

いたので

わたしは少し瞳を閉じて

ホッとした

咲いてくれて

ありがとう

それからわたしは

久しぶりに

赤いルージュを手に取って

唇に重ねた

2015年11月18日 (水)

Iloveもも

Iloveもも

家族の友人にそう言われて

お菓子をいただいた

海外に実家があるので

帰省のお土産らしくて

なにこれ

不思議な味

とってもおいしいCollage27Iloveもも?

えへへ

愛している

愛していると

結婚しようが

くちぐせだった彼がいた

毎日

何度も何度も

愛していると言われると

単純に

わたしは愛されていると

思えた

2015年11月17日 (火)

姉とうさぎ

姉は生まれながらの

リケジョなのだけれど

大学生の時

部屋で泣いていたことがあった

実験用のうさぎが

投薬の結果

痙攣して死んでしまったらしく

ひどくショックを受けていた

姉は結婚して

うさぎを飼い始めた

それからうさぎは

12年という長い間

オーガニック野菜を食べて

結膜炎になったくらいで

元気に姉と暮らしてきた

うさぎが静かに亡くなった日

ペット火葬を

お願いしたらしいのだけれど

12年という長生きに

驚かれたそうだ

ペットロスになった遠くに住む姉から

連絡があったので

うさぎへのレクイエムねと話して

ピアノを弾いた

姉はありがとうと言った

お仕事

専業主婦しかいない環境で

育ったものだから

祖母も母もおばもみんな

専業主婦で

結婚したら悩むことなく

家庭に入った

家事や子育てを

一生懸命やるということは

大変なわりに

感謝されることは

少ないのだけれど

幸せなことも多くて

社会復帰したい

友達は欲しいものを買って

遊んでいるのに

取り残された気持ち

そんなものは

これっぽっちも

感じなかった

だけれども最近になって

子供のために

仕事を探している

今後

ひょっとしたらどこかで

いらっしゃいませ

などと

笑顔をふりまいているかも

しれない

そうなると詩は

あまり書けなくなる

そうなるとカラダは

いまよりずっと大変になる

2015年11月16日 (月)

映画好きなので

幼い頃父に

ももはどんな男性が

タイプなのだ?と

たずねられた

刑事コロンボの

ピーターフォークと

答えたら

個性派だなと

しみじみ父が言った

有名な

うちのかみさんがの日本語訳も

素敵だった

かみさんがいたかどうかは

謎だけれど

明かり

心に明かりが灯ったみたいに

ある日恋が始まって

わたしは

明かりを灯してくれた彼を

不思議そうに見つめた

それから青空の彼と

勝手に名付けて

ラブレターを描いてきた

6年も7年もずっと

わたしは彼を好きでいたわけで

もはや天然記念物 彼にとっては

なんとも迷惑なひと

だったのかもしれないけれど

わたしはわたしで

幸せなひとだった

青空模様の便せんに思いを書いて

彼に届けた日が

遠い過去になってしまったいま

当時の彼の気持ちを

想像してみる

あのとき彼は

クッションみたいに

ラブレターを優しく受け止めて

わたしが彼を忘れて

家族や自分を大切に思い

健やかに暮らすことを

願ったかしらなんて想像

彼はその後

わたしがどうなったのかを

何も知らない

わたしも

何度か彼と別人を

間違えたくらいで

ここにラブレターの続きと

絵手紙を描く以外

何もしていない

そもそもわたしが

彼に告白をした時点で

汚れた女性に

なってしまっただろうから

仕方がないことなのだけれど

本当は彼のことを

少し知りたかったし

友人のひとりに

なりたかった

2015年11月14日 (土)

わたしは空から落ちてきた

わたしは空から

バスと一緒に落ちてきて

空中で止まった

少しみっともない格好で

カラフルで不思議な国に

迷い込んだのだ

少し歩くと占いの館があった

石造りの薄暗い部屋に入ると

そこにいた男性が静かに

おふたりですねと言った

いつも

ふたりですねと言われる

でもひとりですと

わたしは答えた

ええ 

あなたはひとりですよ

男性はそう言って

椅子に座るように促した

わたしは

石の椅子に座ってから

ふとテレビの方を見た

画面には

サンタクロースの格好をした

父が映っていた

そりに乗って楽しそうだ

なるほど

このテレビは

誰かの夢を映すのだわと思った

お天気が変わりますね

座ったまま今度は外を眺めながら

わたしはつぶやいた

さっきまで雪が降っていたのに

オレンジいろの金魚が

空中を無数に泳いでいたのだ

いつもお天気が変わるのよ

女性が言った

男性と話していたはずが

いつの間にやら

女性の姿に変わっている

女性は

雪の帽子をかぶった男のひとのことを

話し始めた

あのときからまた

いらっしゃってましたよと

わたし

その男のひと

あまり好きではないんです

そう答えると

女性は驚いた

わたしは続けた

わたし

ずっと好きなひとがいて

いえね 

実はわたし

結婚しているんです

もう20年になるの

でもずっと

好きな人がいて

女性が少し歩いたので

振り返ってわたしは

話しを続けた

思い切って告白したんです

でもふられたの

だけれどずっと好きなんです

彼を忘れて

家事や子育てに熱中しようと

何度も思ったんです

でもずっと好きなんです 女性は

会っていないのに?

と言った

はい

ずっと会っていないのにですと

わたしはきっぱりと

答えた

悲しみ

海外で暮らしていた いとこが

肺の病気で

余命1ヶ月とわかった

父が

叔父たちとは歳の離れた

末っ子なので

いとこといっても

わたしとは

ずいぶん歳の差がある

日本で最後を迎えることに

なった

治療できないらしい

いとこの苦しみと

息子を失う

叔母の気持ちを考えると

言葉が見つからない

挨拶状と旋律

葬儀が終わり

自宅に挨拶状が届いた

どれだけ叔父が

娘を愛して育ててきたのか

どれだけ温厚で

真面目なひとだったのか

ということが

丁寧な言葉で綴られていた

こんなにあたたかい挨拶状を

いただいたのは

初めてだった

改めて叔父が

素敵なひとだったのだと

知った

おしゃべりの母から

葬儀の様子を聞いた

ホテルで行われた

通夜や葬儀は

クラシックの生演奏が流れ

食事もおいしく

宿泊できたので

高齢の親族にとって

優しいものだったらしい

ふと

クラシック?と思った

愛の挨拶の旋律は

そういうことだったのかしらと

考えていたら 笑顔の叔父の姿が

頭にぽっかりと浮かんだ

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