そろりと咲いた
コスモスの咲く日を
わたしは心待ちにしていた
けれどもかたいつぼみは
いつまでもかたいままで
ルージュのように口を閉ざしたまま
覗き込むわたしを
残念がらせた
そんなコスモスが今日そろりと咲いた
ずいぶんと遅咲きで
ちいさな花
ひとつだけれど可憐な
赤い花
花を見せたいひとがいたので
わたしは少し瞳を閉じて
ホッとした
咲いてくれてありがとう
それからわたしは久しぶりに
赤いルージュを手に取って
唇に重ねた
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コスモスの咲く日を
わたしは心待ちにしていた
けれどもかたいつぼみは
いつまでもかたいままで
ルージュのように口を閉ざしたまま
覗き込むわたしを
残念がらせた
そんなコスモスが今日そろりと咲いた
ずいぶんと遅咲きで
ちいさな花
ひとつだけれど可憐な
赤い花
花を見せたいひとがいたので
わたしは少し瞳を閉じて
ホッとした
咲いてくれてありがとう
それからわたしは久しぶりに
赤いルージュを手に取って
唇に重ねた
Iloveもも
家族の友人にそう言われて
お菓子をいただいた
海外に実家があるので
帰省のお土産らしくて
なにこれ
不思議な味
とってもおいしいIloveもも?
えへへ
結婚しようが
くちぐせだった彼がいた
毎日何度も何度も
愛していると言われると
単純にわたしは愛されていると
思えた
リケジョなのだけれど
大学生の時部屋で泣いていたことがあった
実験用のうさぎが投薬の結果
痙攣して死んでしまったらしく
ひどくショックを受けていた
姉は結婚してうさぎを飼い始めた
それからうさぎは12年という長い間
オーガニック野菜を食べて
結膜炎になったくらいで
元気に姉と暮らしてきた
うさぎが静かに亡くなった日ペット火葬を
お願いしたらしいのだけれど
12年という長生きに
驚かれたそうだ
ペットロスになった遠くに住む姉から連絡があったので
うさぎへのレクイエムねと話して
ピアノを弾いた
姉はありがとうと言った
育ったものだから
祖母も母もおばもみんな
専業主婦で
結婚したら悩むことなく家庭に入った
家事や子育てを一生懸命やるということは
大変なわりに
感謝されることは
少ないのだけれど
幸せなことも多くて社会復帰したい
友達は欲しいものを買って
遊んでいるのに
取り残された気持ち
そんなものはこれっぽっちも
感じなかった
だけれども最近になって子供のために
仕事を探している
今後ひょっとしたらどこかで
いらっしゃいませ
などと
笑顔をふりまいているかも
しれない
そうなると詩はあまり書けなくなる
そうなるとカラダはいまよりずっと大変になる
ももはどんな男性が
タイプなのだ?と
たずねられた
刑事コロンボのピーターフォークと
答えたら
個性派だなとしみじみ父が言った
有名なうちのかみさんがの日本語訳も
素敵だった
かみさんがいたかどうかは謎だけれど
ある日恋が始まって
わたしは
明かりを灯してくれた彼を
不思議そうに見つめた
それから青空の彼と勝手に名付けて
ラブレターを描いてきた
6年も7年もずっとわたしは彼を好きでいたわけで
もはや天然記念物 彼にとってはなんとも迷惑なひと
だったのかもしれないけれど
わたしはわたしで幸せなひとだった
青空模様の便せんに思いを書いて彼に届けた日が
遠い過去になってしまったいま
当時の彼の気持ちを想像してみる
あのとき彼はクッションみたいに
ラブレターを優しく受け止めて
わたしが彼を忘れて
家族や自分を大切に思い
健やかに暮らすことを
願ったかしらなんて想像
彼はその後わたしがどうなったのかを
何も知らない
わたしも何度か彼と別人を
間違えたくらいで
ここにラブレターの続きと絵手紙を描く以外
何もしていない
そもそもわたしが彼に告白をした時点で
汚れた女性に
なってしまっただろうから
仕方がないことなのだけれど
本当は彼のことを少し知りたかったし
友人のひとりになりたかった
バスと一緒に落ちてきて
空中で止まった
少しみっともない格好でカラフルで不思議な国に
迷い込んだのだ
少し歩くと占いの館があった石造りの薄暗い部屋に入ると
そこにいた男性が静かに
おふたりですねと言った
いつもふたりですねと言われる
でもひとりですと
わたしは答えた
ええあなたはひとりですよ
男性はそう言って椅子に座るように促した
わたしは石の椅子に座ってから
ふとテレビの方を見た
画面にはサンタクロースの格好をした
父が映っていた
そりに乗って楽しそうだ
なるほどこのテレビは
誰かの夢を映すのだわと思った
お天気が変わりますね座ったまま今度は外を眺めながら
わたしはつぶやいた
さっきまで雪が降っていたのにオレンジいろの金魚が
空中を無数に泳いでいたのだ
いつもお天気が変わるのよ女性が言った
男性と話していたはずがいつの間にやら
女性の姿に変わっている
女性は雪の帽子をかぶった男のひとのことを
話し始めた
あのときからまたいらっしゃってましたよと
わたしその男のひと
あまり好きではないんです
そう答えると女性は驚いた
わたしは続けたわたし
ずっと好きなひとがいて
いえね実はわたし
結婚しているんです
もう20年になるの
でもずっと好きな人がいて
女性が少し歩いたので振り返ってわたしは
話しを続けた
思い切って告白したんですでもふられたの
だけれどずっと好きなんです
彼を忘れて家事や子育てに熱中しようと
何度も思ったんです
でもずっと好きなんです 女性は会っていないのに?
と言った
はいずっと会っていないのにですと
わたしはきっぱりと
答えた
肺の病気で
余命1ヶ月とわかった
父が叔父たちとは歳の離れた
末っ子なので
いとこといってもわたしとは
ずいぶん歳の差がある
日本で最後を迎えることになった
治療できないらしい
いとこの苦しみと息子を失う
叔母の気持ちを考えると
言葉が見つからない
自宅に挨拶状が届いた
どれだけ叔父が
娘を愛して育ててきたのか
どれだけ温厚で
真面目なひとだったのか
ということが
丁寧な言葉で綴られていた
こんなにあたたかい挨拶状をいただいたのは
初めてだった
改めて叔父が素敵なひとだったのだと
知った
おしゃべりの母から葬儀の様子を聞いた
ホテルで行われた通夜や葬儀は
クラシックの生演奏が流れ
食事もおいしく
宿泊できたので
高齢の親族にとって
優しいものだったらしい
ふとクラシック?と思った
愛の挨拶の旋律はそういうことだったのかしらと
考えていたら 笑顔の叔父の姿が頭にぽっかりと浮かんだ
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