わたしは空から落ちてきた
わたしは空から
バスと一緒に落ちてきて
空中で止まった
少しみっともない格好でカラフルで不思議な国に
迷い込んだのだ
少し歩くと占いの館があった石造りの薄暗い部屋に入ると
そこにいた男性が静かに
おふたりですねと言った
いつもふたりですねと言われる
でもひとりですと
わたしは答えた
ええあなたはひとりですよ
男性はそう言って椅子に座るように促した
わたしは石の椅子に座ってから
ふとテレビの方を見た
画面にはサンタクロースの格好をした
父が映っていた
そりに乗って楽しそうだ
なるほどこのテレビは
誰かの夢を映すのだわと思った
お天気が変わりますね座ったまま今度は外を眺めながら
わたしはつぶやいた
さっきまで雪が降っていたのにオレンジいろの金魚が
空中を無数に泳いでいたのだ
いつもお天気が変わるのよ女性が言った
男性と話していたはずがいつの間にやら
女性の姿に変わっている
女性は雪の帽子をかぶった男のひとのことを
話し始めた
あのときからまたいらっしゃってましたよと
わたしその男のひと
あまり好きではないんです
そう答えると女性は驚いた
わたしは続けたわたし
ずっと好きなひとがいて
いえね実はわたし
結婚しているんです
もう20年になるの
でもずっと好きな人がいて
女性が少し歩いたので振り返ってわたしは
話しを続けた
思い切って告白したんですでもふられたの
だけれどずっと好きなんです
彼を忘れて家事や子育てに熱中しようと
何度も思ったんです
でもずっと好きなんです 女性は会っていないのに?
と言った
はいずっと会っていないのにですと
わたしはきっぱりと
答えた
コメント