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2015年11月14日 (土)

わたしは空から落ちてきた

わたしは空から

バスと一緒に落ちてきて

空中で止まった

少しみっともない格好で

カラフルで不思議な国に

迷い込んだのだ

少し歩くと占いの館があった

石造りの薄暗い部屋に入ると

そこにいた男性が静かに

おふたりですねと言った

いつも

ふたりですねと言われる

でもひとりですと

わたしは答えた

ええ 

あなたはひとりですよ

男性はそう言って

椅子に座るように促した

わたしは

石の椅子に座ってから

ふとテレビの方を見た

画面には

サンタクロースの格好をした

父が映っていた

そりに乗って楽しそうだ

なるほど

このテレビは

誰かの夢を映すのだわと思った

お天気が変わりますね

座ったまま今度は外を眺めながら

わたしはつぶやいた

さっきまで雪が降っていたのに

オレンジいろの金魚が

空中を無数に泳いでいたのだ

いつもお天気が変わるのよ

女性が言った

男性と話していたはずが

いつの間にやら

女性の姿に変わっている

女性は

雪の帽子をかぶった男のひとのことを

話し始めた

あのときからまた

いらっしゃってましたよと

わたし

その男のひと

あまり好きではないんです

そう答えると

女性は驚いた

わたしは続けた

わたし

ずっと好きなひとがいて

いえね 

実はわたし

結婚しているんです

もう20年になるの

でもずっと

好きな人がいて

女性が少し歩いたので

振り返ってわたしは

話しを続けた

思い切って告白したんです

でもふられたの

だけれどずっと好きなんです

彼を忘れて

家事や子育てに熱中しようと

何度も思ったんです

でもずっと好きなんです 女性は

会っていないのに?

と言った

はい

ずっと会っていないのにですと

わたしはきっぱりと

答えた

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