霧雨の森で
霧雨は
頬を撫でてくれるだろうか
森の緑を
美しく艶めかせても
わたしの頬を撫でてはくれないだろう
わたしは霧雨の森を歩いていた
それにしても美しい森だわ絵本に描かれているような
三角の大木が
きれいに並ぶ空間を通り過ぎたとき
へんてこな形の椅子に
誰かが座っていることに
気がついた
グレーのパーカーを着た筋肉質で細身の男性は
へんてこな形の椅子に座り
頭をかかえながら
物思いにふけっているように
みえた
しばらく歩くと今度は大きな木のねっこに
誰かがうずくまっている
艶めいた緑のなかにうっすらと見える
わたしは傘をくるくると回しながら
立ち止まった
その男性もグレーのパーカーを着ていて
パーカーをすっぽりとかぶり
頭がとんがっている
顔だけ見えている様子は妖精を想像させた
グレーのパーカーは
この森の係員の制服なのだろうか
男性は突然木の根っこから
すくりと立ち上がり
つま先立ちで空を見上げて
顔に霧雨をあび始めたのだ
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