青空の彼に会えた日
もう何年も前のことだけれど
青空の彼に
しばらくぶりに会えた日
彼はいつもと違うJRの水を持っていた
いつもはペットボトルに
別のお茶を入れていた
お茶を入れてくれるひとがいるのかしら
彼はまぶしそうにして
片方のまゆをあげた後
準備をしていた
何度か目があった わたしからご挨拶をすればよかったけれど
嫌われているのではないかしらと何も言えなかった
彼は来てくれたんだね
ありがとうと
他のひとと話していた
彼の声を久しぶりに聞いて嬉しかった
その後彼がバッグから何かを取り出して
ポケットに入れたのが見えた
ビスケットの歌を思い出した
幼い頃ビスケットの歌が大好きだったな
優しい表情とにっこりと笑う彼を
少しだけ離れたところから見ながら
わたしはうつむいて微笑んだ
わたしの存在を知り彼が嫌な顔をしなかったので
まぁ彼はそんなことしないでしょうけれど
それでもと胸を撫で下ろした
帰るまで近くに行ったり話しかけたりすることが
怖くて怖くてできなかった
帰る時になり彼を見たら
おもしろい携帯を鳴らしていた
小柄なおばさまと
話していて
少し前のめりに話を聞いている背中が見えたので
さようならを背中に言った 駅まで歩いていたら花屋があって
お花を買おうかしらと思ったけれど
もし彼に追いつかれたらどんな顔をしていいのかわからないので
買わずに歩いた
途中に来てくれたんだね
ありがとうと
言われていたひとたちが
わたしに声をかけようとして
おまえ言えよといった様子で
詰め寄ってきたので
人混みにまぎれて駅を少し通り過ぎて逃げた
その後彼らと青空の彼が
一緒に活動していたので
大事な後輩だったのだわと知った
なんて声をかけようとしていたのか
気になったけれど
息子でもおかしくない年齢だったのとナンパをしようとしている
雰囲気だったのとで
思わず苦笑い
会えたその日 何度かチャンスはあったのだけれど
とにかく自信がなくて怖くて
何もできなかった
その日の写真を彼は持っているかしら
わたしは時々眺めては同じ時を過ごしたことを思い出して
今も恥ずかしくなっている
« 食べ物と姑 | トップページ | 物にはひとの思いが宿る »
コメント