思い出のお味噌汁
実家の敷地内に
以前お手伝いさんだったかたの
家があった
祖父はいろいろなひとに
高額な援助や寄付をしていて
近所の家はほとんどが祖父の援助で建っていた
信じられない額を一件一件に渡していた
という歴史みたいなものがあった
そんななか
理由はわからないけれど
一件だけ
同じ敷地内に家があった
そこに住む
おじいちゃんとおばあちゃんは
本当に子供好きで
わたしをかわいがってくれた
朝6時前になると
お味噌汁のいい香りがしてくる
わたしはこっそりと家をぬけだして
おばあちゃんのお味噌汁を
いただきに行った
おばあちゃんのお味噌汁はいつも同じで
手作りのお味噌に
じゃがいもと玉ねぎが入っていた
おばあちゃんはももちゃんはおいもちゃんが好きだから
たくさん入れましょうねと
お椀にじゃがいもをたくさん入れてくれた
わたしのおふくろの味
おばあちゃんの大根のおつけものは
誰も真似できないくらいに
おいしかった
おなかをすかせていたわけでは
ないけれども
わたしにとって
幸せな時間だった
ある日母に見つかって
みっともないからやめなさいと
幼いわたしが届かない
高い場所に鍵をかけられた
朝になって泣いているわたしの声が
おばあちゃんにも聞こえたらしくて
食べに来てくれていいのにとおばあちゃんは母に
言ってくれたらしい
母は
食べさせていないみたいで恥ずかしいと
怒っていた
わたしは元気が出ないとき
そのお味噌汁をつくる
じゃがいもをたくさん入れて
« 祖母のジャムパン | トップページ | おじいちゃんとお人形 »
コメント