ピアノじゃなくてね
ピアノの発表会の時
フランス人形みたいな
ドレスを着せてもらうのが
楽しみだった
幼いわたし
発表会が行われるホテルには
自動靴磨きがあった
お友達とふたりで
靴を入れると
ウィーンと音がして
ブラシが磨いてくれる
何度も磨いて
お友達の靴は
鏡のようにピカピカに輝いているのに
わたしの靴は
奇妙な輝きだった
どうしてかな
何度も磨いてみる
母に
ももの靴だけ
ピカピカにならないと
わたしは訴えた
それは革靴だからよ
革靴の方がいい靴なのと
母は小声で言った
わたしはフランス人形の靴のような
革靴を眺めて
ピカピカするだけが
良いというわけではないのねと
思ったのだけれども
やっぱり
ピカピカがいいなと
もう一度磨いた
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