アロエのトラウマ
ニードルを使っていて
急に
よみがえってきた記憶があった
わたしが
小学校二年生くらいのころ
だったと思う
お友達とよく遊んでいた
公園のような広場の
近くに
テニスクラブのようなものがあった
フェンスごしに
大学生のお兄さん達が
数人
休憩していた
お兄さん達が
おいで おいでと
手招きをしていたのは
覚えているのだけれど
お兄さん達が
遊ぼうよと言っていたのか
遊んでと
お友達が言っていたのかは
わからない
お兄さん達に
おいで おいでと
呼ばれていて
わたしたちは
フェンスをよじ登り
中に入っていた
芝生の広いお庭のようなところに
子供の背丈くらいの
巨大で
グロテスクなケープアロエが
ぽつん ぽつんぽつんと
はえていて
解放感のある休憩場所に
大学生のお兄さん達がいた
高いところに
テレビみたいなものがあって
南国風の
テーブルや椅子があった
お庭では
お兄さん達が
追いかけっこをしていた
まてまてと
お兄さん達
キャーと
私たち
というようなやり取りが続いていた
捕まえられると
罰ゲームがあった
それは
巨大ケープアロエの
針のような先端部分に
お兄さんに
お姫様抱っこをされて
身動きできないまま
おしりを刺される
というもの
今みたいに
女の子が
ズボンまたはスパッツやレギンス
見えてもよい下着
ではなかった
アロエをおしりに刺される
というのは
恐怖しかなくて
おそらく
ちょんとする程度だったとは思うけれど
わたしのなかでは
おしりにぶっすり刺す
というイメージしかなかった
女性の体について
きちんとした性教育もなかったので
小学生の私たちは
誰も知らず
スカートがめくれて
下着が丸見えになっていること
性的なイタズラをされそうなときは
はっきりとNOと言う
という知識も何もなかった
お友達のみんなは
キャーキャー騒いでいたけれど
わたしは恐怖で
号泣していた
それでも
いけている大学生に
憧れの気持ちがあったのか
お友達と一緒に遊びたかったのか
わからないのだけれど
手招きされて
わたし達は
ちょくちょく遊んでもらっていた
親に話したかどうか
わたしの記憶は
あいまいなのだけれど
ひとりで行ってはいけないと
誰かに言われたような記憶がある
わたしは
お兄さんに呼ばれても
お母さんに怒られるからとかなんとか
言って
フェンスをよじ登らなくなった
すると中から
お兄さん達が
おいでよと困ったように
何度もわたしを
呼んでいた記憶がある
他のお友達は
大丈夫だよ
などと言いながらよじ登っていた
記憶もある
あるとき
きれいな
大学生らしきお姉さんがいて
そのときは
お兄さん達の態度がまるで違ったから
お兄さん達には
何か悪いことをしていた
という自覚があったのかも
しれない
わたしには
まだひとに話したことのない
ここにも もちろん
書いたことのないトラウマは
あるのだけれど
おそらく
わたしはそのアロエが
トラウマになり
内診恐怖になった
ということに気がついた
驚いて
ニードルを見つめたわたし
実は
親に聞いても
姉に聞いても知らない
わたしには
手術後のような謎の傷がある
今も残っているので
原因はケープアロエではないと思うけれど
もしかしたら
わたしにはまだ
思い出せていない何か
動けない状態で傷をつけられた
(手術かも)
という恐怖が
あるのかもしれない
最初は
お兄さん達も
ふざけたり
軽いイタズラだったり
したかもしれない
子供は
悪いことだとは思わないかもしれない
子供同士でも
ごっこ遊びをすることもあるじゃない
だけれど大人になって
よくよく理解したとき
心が傷つくこともあるよね
わたしは
男性にボディタッチされても
警戒心がまるでなく
平気なタイプの大人に
育ってしまったのだけれど 汗
誰かに
体を触られたら
はっきりとNOと言う
という教育は
男女関係なく
幼いころから必要なこと
だと思う
しばらくして
テニスクラブはなくなった
そのとき
わたしはなぜか
お兄さんへの罪悪感と
勝利と嫉妬がまじり
策略ができる小さな大人の女性
という気持ちで
跡地を眺めていた記憶がある
なぜ
そのような気持ちで
眺めていたのかは謎
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