一畳の部屋
わたしは ひどく疲れて
いつの間にか
一畳の部屋に立っていた
その部屋は
一畳の畳
天井はギリギリ立てるくらい
左右に壁があり
目の前は
ぽっかりと開いていた
地面からは
ある程度
高さがあるようで
階段はなく
玄関と呼ばれるようなものもない
おそらく
多くはないけれど
何個かは
蜂の巣のように
横長な
ボックスが並んでいるのだろうな
という印象
目の前には
透き通った海が広がり
電車が
すぐ真下を通っていた
電車が通る間に
嫌なことでも叫んだら
ガタンゴトン
という おなじみの音
にかきけされて
すっきりするのではないか
と
電車を見下ろす
そこにいる
わたしは
時間に追われ
逃げているようだった
例えば
仕事を休む
というのに
職場に連絡していない
親に連絡されたら
困る
口うるさい親から
何か言われる
駐車場で車が暴走して
そのまま逃げてきた
というような
結婚した今では
ありもしないようなことや
車が暴走
から
逃げているようだった
それに
今日から夜の仕事を始めるので
一畳の部屋で
着替えをしている
部屋の持ち主が
入り口のない入り口から
帰ってきた
慌てるわたし
すみません
夜の仕事に行くので
着替える場所がなくて…
一見
みすぼらしい男性が
夜の仕事なら
こんな扱いをされても
平気でいなくては
いけないよと
からかうように
ボディータッチをしてくる
それから
わたしのはなしを
聞いてくれた
はなしの途中に
ひしゃげながら
スマホを気にしていた
わたしを
男性が
虹色の 長い手で
抱きしめてくれた
指からは
せっけんの香りがした
ここには
お風呂がなさそうなので
銭湯が近くにあるのかな と
思った
男性は
虹色の手を
ゆらゆらさせながら
誰からも
バグしてもらっていないのか?と
言った
わたしは
幼いころから
今までを
考えて
誰からもバグされていない
と
答えた
そういえば
抱きしめられたことがないと
思った
つらいとき 嬉しいとき
ただそこに
強くなろうとする わたしだけが
存在していた
しばらく
虹色の手で
バグされたまま
はなしをしていると
安心したわたしは
眠ってしまった
目をさますと
一畳におかれた
一枚の真っ白な掛け布団の
なかに
わたしがいて
すみっこに
虹色の男性が
眠り
一畳が大きくなっていた
男性の眠る姿を
みたわたしは
安心して
また
深い眠りに落ちた
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